リカバリーストーリー バンブーさんの場合

50代 バンブーさんの場合

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 私は現在50代の男性です。
 高校1年生の夏くらいから徐々に学校に行かなくなり、そのまま不登校になりました。というか当時はまだ、不登校という言葉はなく登校拒否という呼ばれ方が一般的でした。
 高校はレポートを出して卒業することができましたが、そのまま就職も進学もせずひきこもり生活になりました。 ひきこもり中の生活は毎週発売される週刊の漫画雑誌を購入しに本屋に行くことだけを目的に生きていました。 家族とは余り食事もせず自室にこもってゲームばかりやっていました。お金は高校生の時に新聞配達のアルバイトをしていたので、その時のお金を使ったり、親からもらったりしていました。 新発売のゲームを買うと寝る間を惜しんでゲームばかりしていまいた。朝新聞配達のバイクの音で朝がきたことを知る生活を続けていました。ゲームと音楽を聴くことで将来に対する不安を紛らわしていたのだと今は思います。 手持ちのお金が少なくなった頃、人に会わなくて良いアルバイトはないかと考え、近くの運送会社の荷物の仕分けのアルバイトを始めました。仕分けのバイトは目の前にきた荷物の宛名を確認して、自分の担当区域だとピックアップしてボックスに入れるという単純な仕事でしたが、ほかの人とほとんど関わること無く、仕事が出来るので自分にとっても、とても楽な仕事でした。 ただそのアルバイトも、お中元とお歳暮の時期の繁忙期だけの仕事だったので、もらった給料でまたゲームを買い、ゲームばかりする生活を繰り返していました。 将来に対する漠然とした不安、自分は何もできない人間なんだ、という嫌悪感などが常にあり、希死念慮も時折ありました。 その頃に出版された本に「完全自殺マニュアル」という本がありました。その本は話題にもなり本屋に平積みされいている状況でした。週刊漫画雑誌を買いに行った際、立ち読みをして、一時購入を検討したのですが、「この本を買ったら自分は死んでしまうだろう」という思いがあり、購入することをやめたことが今でも思い出されます。 そんな生活の中、両親から車の免許でも取ったら良いのではという提案もあり、18歳の頃に自動車教習所に通い始めました。 普段の生活で人前に出ることが余りない状況だったのですが、自動車免許を取るという明確な目標があったためか、休むことなく通い続けられ、無事運転免許を取得しました 。
免許を取得したことにより、それまで時々仕分けのアルバイトをしていた運送会社から、車を使っての宅配の仕事をしないかと声をかけられ、お中元とお歳暮の繁忙期に、荷物の配達のアルバイトをするようになりました。
毎日宅配先の多くの人と出会うことになるのですが、「宅配便です」「はんこお願いします」「ありがとうございました」。 これだけの会話で済んでしまうのでなんとなくこなすことができました。  
 相変わらず、繁忙期以外は新しいゲームを買って、昼夜逆転の生活を続けていました。  
 24歳になった頃、父がたまたま関わった障害者の支援団体の会報に、職員募集の案内が出ていると教えてくれて、応募してみることにしました。  
 応募するような気持ちになったのは、それまで自分は世の中の役に立たない、何もできない、底辺の人間だと思っていたので、障害者ならその人たちより自分が上に立てるのではないかという思いからでした。  
 面接を受けたところ採用され、障害のある人の支援の仕事が始まりました。  
 障害のある人は自分より下の存在だと勤める前は考えていましたが、実際仕事をしてみると、自分に仕事を教えてくれるのも障害のある人で、その人は私より10分の1以下の時給で働いていることに衝撃を受け、この理不尽な状況を変えないと!と思い仕事を続けていきました。  
そしてそのまま30年障害のある人の支援の仕事を続けています。 全く、福祉のことを学ばないまま仕事に就いたのでわからないことばかりでしたので、夜間1年の学校に通い社会福祉主事の資格を取得、介護福祉士の通信教育で学び、介護福祉士を取得。また、しばらくして介護支援専門員の資格も取得しました。 さらに社会福祉士の資格を取りたいと思ったのですが、大学を出ていなかった私には10年間の指定施設での実務と通信教育が必要だとわかり、指定施設で10年の経験を積んだ後、1年半大学の通信教育課程に学び、社会福祉士資格を取得しました。 また、同じ大学の通信教育課程で精神保健福祉士の勉強をして、精神保健福祉士を取得。 新設された公認心理師も実務経験枠で受験をして、公認心理師の資格も取得しました。
 なんだかんだと障害者より上に立ちたい思いで始めた障害のある人の支援の仕事を30年続けています。
 高校での学びや大学での学びがなくても、様々なルートで資格が取れて仕事に就くことができます。 今の状態を諦めずに、どんな人間になりたいかを想い続ければ必ずそのなりたい自分に近付けるはずだと思っています。 今の状況が苦しい方も多いと思いますが、どんな人間になりたいか、どんな生活がしたいか、どんな役割を果たしたいか。そんなことをイメージし続けていくことで未来が開けていくはずですので、焦らず妄想を楽しんでいきましょう。

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